2026年5月8日

これだけ読めばわかるAIエージェントで変わるGoogle Cloudの戦略(Google Cloud Next ’26 参加レポート)


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この記事の要点

  • Google Cloud は、生成AIを単なるチャット機能ではなく、業務を進めるAIエージェントとして位置づけ始めている
  • そのために、Gemini Enterprise、BigQuery、セキュリティ、Workspace などを一体の基盤として整備している
  • 企業側では、AIモデル選定だけでなく、データ整備、権限設計、既存システム連携、運用設計が重要になる

2026年4月22日〜24日の3日間、Google Cloud Next '26 がラスベガスで開催されました。


Google Cloud Next は、Google Cloud の最新技術や今後の方向性が発表される年次イベントです。今回も、AI、データ、インフラ、セキュリティ、Workspace など、幅広い領域で多くのアップデートが発表されました。


その中で私が特に注目したのは、個々の新機能そのものではなく、Google Cloud がAIを企業システム全体の中にどのように組み込もうとしているかです。


これまで生成AIは、文章作成、要約、社内検索、問い合わせ対応など、特定業務を効率化するための手段として導入されることが多くありました。


一方で今回の発表では、AIがデータを参照し、業務アプリと連携し、セキュリティの管理下で動作しながら、業務プロセスの一部を担う存在として描かれていました。


この変化を理解するうえで鍵になるのが、Gemini Enterprise への統合、AIのためのデータ基盤とセキュリティ、そして既存システムとの連携です。


この記事では、発表内容を機能一覧として追うのではなく、Google Cloud が何を狙っているのかを、企業導入の観点から読み解いていきます。

Gemini Enterpriseへの統合が示すもの


Gemini Enterprise
出典:Google Cloud Blogより

今回の発表で象徴的だったのが、Google Cloud のAIポートフォリオが Gemini Enterprise という統合ブランドへ整理されたことです。

従来、Google Cloud のAI関連サービスは、Vertex AI、Gemini、Agent Builder、Contact Center AI、Workspace の Gemini 機能など、用途ごとに分かれて見える部分がありました。

しかし今回の発表では、それらが Gemini Enterprise App、Gemini Enterprise Agent Platform、Gemini Enterprise for Customer Experience などに再整理されました。

ポイント

  • 開発者向けAI活用(Vertex AI) は Gemini Enterprise Agent Platform へ
  • 従業員向けのAI活用は Gemini Enterprise App へ
  • 顧客接点のAI活用は Gemini Enterprise for Customer Experience へ

これは単なる名称変更ではなく、AI活用が個別機能の導入段階から、企業全体でAIエージェントを構築・管理・活用する段階へ移りつつあることを示すメッセージだと受け取りました。

従来の生成AI活用は、チャットボット、RAG、文章生成、要約といった単機能の導入が中心でした。一方で Gemini Enterprise の世界観では、AIエージェントが業務システム、社内データ、従業員、顧客接点とつながり、業務プロセスの中で継続的に動く存在になります。

つまり Google Cloud は、AIを「ツール」としてではなく、企業活動を支えるワークフォースとして位置づけ直しているように見えました。

Google Cloudが描くAIエージェント時代の企業基盤


Gemini Enterprise
出典:Google Cloud Blogより

今回の発表を戦略として整理すると、Google Cloud はAIエージェント時代の企業基盤を、複数のレイヤーで一体的に提供しようとしているように見えます。

領域 役割
AI Hypercomputer AIを大規模に動かすためのインフラ基盤
Agentic Data Cloud AIが企業データや業務文脈を理解するためのデータ基盤
Gemini Enterprise Agent Platform AIエージェントの構築・運用・統制・最適化を担う基盤
Gemini Enterprise App / Workspace / CX 従業員や顧客がAIエージェントと接する業務の入口
Agentic Security AIエージェント時代の安全性と防御を支える基盤

このように見ると、Google Cloud は単に優れたモデルを提供しようとしているのではありません。

インフラ、データ、エージェント基盤、業務アプリ、セキュリティまでを含めた統合AIスタックを提供しようとしている と捉えることができます。

モデル単体ではなく、企業でAIエージェントを動かすための周辺要素までまとめて提供しようとしている点に、今回の発表の大きな意味があると考えています。

Google Cloud は、AIエージェントを少数のPoCで試すものではなく、企業全体で安全に運用し、継続的に改善していく業務基盤として捉えているように感じました。

AI民主化と既存システム連携

今回の発表でもう一つ重要だと感じたのが、AIエージェント開発の民主化です。

Gemini Enterprise App は、職場におけるAIへの玄関口として位置づけられています。特に、非エンジニアの従業員でも自然言語でエージェントやワークフローを作成・テスト・公開できる方向性が示されました。

これは、AIエージェントの構築がIT部門や一部の専門家だけのものではなくなっていくことを意味します。

業務を最も理解しているのは、実際にその業務を担当している現場の人です。今後は、現場担当者が自分たちの業務に合わせてAIエージェントを作り、改善し、組織内で共有していく世界に近づいていくと感じました。

ただし、企業でAIを本番活用するうえでは、既存システムや既存データとの接続が大きな課題になります。

多くの企業では、データが基幹システム、SaaS、ファイルサーバー、データウェアハウスなどに分散しています。すべてのデータを一か所に集約してからAI活用を始めるのは、コスト面でもセキュリティ面でも現実的ではありません。

そこで重要になるのが、データを移動せずに、既存システムとAIエージェントを安全につなぐ考え方です。

既存システム連携の考え方

データを無理に複製・移動するのではなく、元のシステムに留めたまま、AIエージェントが必要な範囲で安全に参照・活用できるようにする。

これは、AIを導入する際の現実的なアプローチだと思います。

AI活用は、新しいシステムをゼロから作ることだけではありません。

既存のIT資産を活かしながら、そこにAIエージェントを接続し、業務プロセスを少しずつ変えていくことが重要になる と感じました。

データ基盤はAIエージェントが業務判断や実行に使うための基盤へ

特に重要だと感じたのが、データ基盤の位置づけの変化です。

今回の Google Cloud Next ’26 では、Google Cloud のデータポートフォリオが Agentic Data Cloud として打ち出されました。

これまでのデータ基盤は、主に人間がデータを分析し、意思決定するためのものでした。しかしAIエージェントの活用が進むと、データ基盤には別の役割が求められます。

それは、AIが業務の前提やルールを理解し、判断に使える状態でデータを提供することです。

従来 これから
人間がデータを見て分析する AIが業務文脈を踏まえて判断に使う
BIやレポートで人に情報を提供する 業務ルールや指標定義をAIに提供する
データの集計・可視化が中心 データの意味・定義・信頼性が重要になる

AIエージェントが正しく業務を支援するには、データの場所だけを知っていても不十分です。そのデータが何を意味するのか、どの業務で使われるのか、どの指標定義が正しいのか、どの範囲で利用してよいのかを理解できる必要があります。

たとえば、同じ名称のデータ項目でも、部門やシステムによって使われ方が異なることがあります。人間であれば経験や会話の中で補正できますが、AIに業務判断を任せる場合は、こうした前提やルールをあらかじめ整理しておく必要があります。

Knowledge Catalog や BigQuery の進化は、まさにこのためのものだと感じました。

AIのハルシネーションを抑えるには、モデルの性能を上げるだけでは限界があります。企業固有のルール、データ定義、業務文脈、指標の意味をAIに正しく渡すことが重要になります。

今後のAI活用におけるデータ基盤の価値は、「レポートを作れること」から「AIが業務文脈を誤解せずに判断できること」へ広がっていく と感じます。

セキュリティとガバナンスもエージェント時代へ

AIエージェントが業務を実行するようになると、セキュリティとガバナンスの考え方も大きく変わります。

従来の生成AI活用では、「不適切な回答をしないか」「機密情報を出さないか」といった観点が中心でした。しかしAIエージェントが実際に業務システムへアクセスし、操作を行うようになると、論点はさらに広がります。

エージェント時代に必要な統制

  • どのエージェントが、どのデータにアクセスできるのか
  • どの業務操作を実行してよいのか
  • どの処理には人間の承認を残すべきなのか
  • 異常な挙動をどう検知するのか
  • 実行結果をどう監査するのか

今回の発表では、Agent Identity、Agent Gateway、Model Armor、Agent Registry、Agent Observability など、エージェントを安全に管理・監視するための仕組みが強調されていました。

これは、Google Cloud がAIエージェントを単なるアプリケーションではなく、企業内でIDを持ち、権限を持ち、監視されながら動く新しい実行主体として扱おうとしていることを示していると思います。

また、セキュリティ運用そのものも変わっていきます。

攻撃者がAIを活用し、攻撃の速度や規模を高めていくなら、防御側も人間の手作業だけでは追いつきません。脅威検知、調査、検知ルール作成、脅威ハンティング、修復といったセキュリティ運用も、AIエージェントによって支援・自律化されていく必要があります。

そのとき、人間の役割はなくなるのではなく、変わります。

すべてのアラートを手作業で処理する作業者から、AIエージェントの判断を監督し、重要な意思決定に責任を持つ管理者・設計者へと変わっていくのだと思います。

AI活用の本番化において、最大の論点は「AIで何ができるか」だけではありません。むしろ、「AIにどこまで任せられるか」「どのように安全に任せるか」が重要になります。

Google Cloudの戦略とまとめ

Google Cloud は、AIエージェントを「作る」ための技術だけを提供しようとしているのではありません。

今回の発表から見えるのは、AIエージェントが企業内で実際に業務を進めるために必要な土台を、Google Cloud 全体で整えようとしていることです。

AIエージェントが業務で価値を出すには、単に高性能なモデルを使えるだけでは不十分です。社内に散らばる構造化データ、ドキュメント、画像、ログ、SaaS上の情報などを、AIが理解しやすい形で安全に参照できる必要があります。

一方で、企業データをすべて一か所に移動・複製するのは現実的ではありません。セキュリティ、権限管理、データ鮮度、移行コストの観点からも、既存システムにデータを残したまま、AIエージェントが必要な情報へ安全にアクセスできる設計が重要になります。

Google Cloudが狙っていること

  • AIエージェントを業務プロセスの中で動かすための基盤を作る
  • 既存システムにデータを残したまま、安全にAIから参照できるようにする
  • Google Cloud の強みである BigQuery を中核に、構造化・非構造化データの意味や業務文脈をAIが理解しやすい形に整え、AI時代のデータ基盤として活用を促進する
  • 現場ユーザーによるエージェント作成・管理を容易にし、全社で活用できる状態にする

つまり Google Cloud の戦略は、AIモデル単体の競争ではなく、AIエージェントが企業データを理解し、安全に業務へ接続されるための基盤を押さえることにあると見ています。

そのためには、生成AIやGoogle Cloudの技術理解だけでなく、業務理解、データ設計、アプリケーション開発、セキュリティ、運用設計を組み合わせて進める必要があります。

AIエージェント活用で検討すべきこと

  • どの業務プロセスにAIエージェントを組み込むか
  • どのデータやシステムと連携させるか
  • どこまでAIに任せ、どこに人間の承認を残すか
  • 導入後にどのように監視し、評価し、改善するか

当社としても、Google Cloud の最新技術を活用しながら、お客様の業務に合わせたAIエージェント活用の企画、検証、システム連携、本番運用までを支援していきたいと考えています。

Google Cloud Next ’26 で示されたのは、単なる生成AI機能の追加ではありませんでした。Google Cloud は、AI Hypercomputer、Agentic Data Cloud、Gemini Enterprise Agent Platform、Gemini Enterprise App、Agentic Security などを通じて、AIエージェントを企業活動に組み込むための基盤を整えようとしています。

Google Cloud は、AIを単なる便利機能としてではなく、企業活動そのものをAIエージェントで動かすための業務基盤として位置づけようとしていると考えています。

生成AIの活用は、「試す」段階から「業務を動かす」段階へ移り始めています。Google Cloud Next ’26 は、AIエージェント時代に向けて、クラウドの役割そのものが変わり始めていることを強く示すイベントだったと考えています。

2026年5月8日 これだけ読めばわかるAIエージェントで変わるGoogle Cloudの戦略(Google Cloud Next ’26 参加レポート)

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