2024年2月6日
【Google Cloud】移行センターを使用してクラウドコストを見積してみた!
- Category Google Cloud
突然ですが、オンプレミス環境からクラウド移行を考えた際、コストが気になりませんでしたか?
一般的にはカリキュレーターを使って試算をするかと思いますが、Google Cloudでは「移行センター(Migration Center)」というサービスが提供されています。
このツールを使用することで、オンプレミス環境に変更を加えずに、リソースのサイズと構成に基づいてクラウド上で必要なスペックとそのコストを算出できるようです。
本記事では実際に移行センターを検証し、使用方法や精度などの詳細を掘り下げていきます。
移行センターを使用した移行の流れ
移行センターに備わっている各ツールを使用すると、以下の流れが発生します。それぞれのフェーズで実施する具体的な手順については、本記事で後述します。
- 環境準備
- データ収集
- アセスメント
- 移行計画~移行
環境準備
環境準備にて必要な手順は以下の通りです。
① オンプレミス環境 サーバ準備
② IAMロール付与
③ 移行センターの有効化
④ Discovery Clientの構築
①オンプレミス環境 サーバ準備
本検証を実施するにあたり、「移行対象サーバ」と「Discovery Client」をオンプレミス環境に作成します。
もちろん、「移行対象サーバ」は今回の検証のために作成していますが、実際の環境では業務稼働しているサーバが対象ですので、わざわざ作成する必要はありません。
Discovery Clientはデータ収集を行うサーバになるので、こちらは必須です。
本記事では以下のスペックで作成します。
対象 | CPU | メモリ | ディスク | OS |
---|---|---|---|---|
移行対象サーバ | 2コア
使用率: |
4GB
使用率: |
100GB | Windows Server2022 |
Discovery Client | 2コア | 4GB | 100GB | Windows Server2022 |
※CPUとメモリについてはできる限り本番稼働したサーバを再現したかったため、それぞれツールを使って意図的に負荷をかける状況を作っています。
※Discovery Clientの要件については公式ドキュメントをご確認ください
② IAMロール付与
移行センターの有効化および移行センターのリソース管理を行う上では以下ロールが必要です。
- 移行センターの管理者(migrationcenter.admin)
- 移行センターの追加ロール(※)
- 閲覧者(viewer)
- サービスアカウントキー管理者(iam.serviceAccountKeyAdmin)
(※)「移行センターの追加ロール」については事前定義されたロールがないため、カスタム作成する必要があります。追加する権限は以下4つです。
- iam.serviceAccountKeys.list
- iam.serviceAccounts.list
- resourcemanager.projects.update
- serviceusage.services.enable
③ 移行センターの有効化
権限付与されたユーザーにて移行センターの有効化を実施します。
2. 移行センターの情報を保存する場所を選択します。今回は「us-central-1」を選択します。
※本記事を書いている2023年12月時点では2リージョンしか選択できません。
4. 移行設定は後ほど「アセスメント」章で設定できるため、今はデフォルト設定のままにします。
④Discovery Clientの構築
移行センターの有効化後、Discovery Clientの構築を実施するため、[移行センター] > [データインポート]より、Discovery Clientの設定を実施します。
もし、Discovery Client設定において必要項目を入力しても次の画面へ遷移するボタンが活性化しない場合は、Google Cloudコンソールの言語を英語に変更することで活性化することがあるので試してみてください。
設定内容 | 説明 | 設定値(例) |
---|---|---|
Select how you would like to discover assets | データ収集するサーバ(本記事では移行対象サーバ)のスキャン方法を選択します | Schan your environment |
Discovery Client Name | Discovery Clientの名前を設定します | test-discoveryclient |
Service account | Discovery Clientで使用するサービスアカウントを設定します 権限は不要です |
任意のサービスアカウント |
Estimated number of assets | データ収集するサーバ(本記事では移行対象サーバ)の推定数を設定します | 1 |
Collection days | データ収集期間を設定します 収集期間が過ぎるとデータ収集ができません |
30 |
Terms and Conditions URL | 別途、利用規約がある場合は設定します | – |
設定完了後、以下画面にてDiscovery Clientのインストールモジュールがダウンロードできるようになるため、ダウンロードしたものをDiscovery Clientサーバへ配置します。
また、このタイミングで移行対象サーバと疎通が取れるか確認します。確認内容は以下の通りです。
移行対象サーバ | 確認内容 |
---|---|
Windows Server | wbemtest.exeを使用し疎通できること |
Linux Server | SSHログインができること |
配置したモジュールを起動し、デフォルト設定でインストールを実施していきます。
※モジュールインストールにあたり、Migration .NET Desktop Runtime 6.0が必要となるため、インストールされていない場合は先にインストールしておきます。
インストールが完了したら、デスクトップアイコンにある「Discovery Client」を起動し、移行センターの認証を実施します。
※Discovery Clientサーバから移行センターへ接続する必要があるので、インターネット接続可もしくは公式ドキュメントに記載の接続要件を満たす必要があります。
1. [AUTHORIZE WITH MIGRATION CENTER]をクリックします。
2. [RUN CHECK]をクリックし、[CONTINUE]が活性化するのでクリックします。
3. [LOGIN WITH GOOGLE]をクリックし、移行センターの権限を持つユーザーでログインします。
4. プロジェクト名を入力し、[CONTINUE]をクリックします。
5. ドロップボックスより、Discovery Clientの設定で入力した名前を選択し、[AUTHORIZE]をクリックします。
移行センターの認証完了後、Discovery Clientが移行対象サーバへログインする情報(Credential)を登録していきます。
2. 今回は基本となりそうなOS Scanを試してみたいと思うので、OS Scanになっていることを確認し、[CONFIGURE]をクリックします。
3. OSログイン情報を入力し、[ADD CREDENTIAL]をクリックします。
4. 画面上にクレデンシャル情報が表示されることを確認します。
Credentialが追加できると、[ADD ASSETS] > [Machine] > [Enter IP addresses]より移行対象サーバを追加します。
移行対象サーバの追加方法として、「IPアドレス範囲での指定」「IPアドレスの指定」「CSV」の3種類がありますが、本記事では収集対象が1台であるため、「IPアドレスの指定」の方法で追加します。
無事追加できると、画面上に移行対象サーバ表示されます。こちらで環境準備は完了です。
データ収集
環境準備が整ったら、Discovery Clientを介してデータ収集が行われます。
データ収集する際は、移行対象サーバが要件を満たしていることの確認と、収集期間の検討の2つを考慮する必要があります。
要件の部分で少しハマった部分があるのでご紹介します。
今回の検証で、Windows OSのデータ収集を行う際にWindows Updateの適用状況によってはデータ収集ができない(=疎通ができない)ことがありました。
そのため、ツールインストール前に移行対象サーバと疎通が取れるか確認する流れとして今回記載しています。
データ収集期間については機能検証が目的であるため、収集期間は1週間とします。
実際の運用環境においては、日々の業務負荷やその他の要因を考慮し、適切な収集期間を検討してください。
アセスメント
収集期間経過後は、アセスメントとして見積レポートを出していきます。
ただ、その前に移行設定を作成します。移行設定は、事前定義されたパラメータを使用し、移行対象サーバのスペックなどをどのように移行するかを設定するものです。
本記事では以下2パターンの移行設定を作成します。設定値は主要なもののみ記載します。
また、今回は違いがシンプルにわかるようサイズ最適化の部分だけ変えています。
※詳細な設定内容については公式ドキュメントをご確認ください。
設定項目 | 設定値① | 設定値② |
---|---|---|
移行設定名 | 比較1 | 比較2 |
ロケーション | asia-northeast1 | asia-northeast1 |
Googleプロダクト | Google Compute Engine | Google Compute Engine |
マシンサイズ | すべての種類 | すべての種類 |
ライセンス | 従量課金制 | 従量課金制 |
サイズ最適化 | アグレッシブ | 適度 |
移行設定が作成できると、レポートを出力してみます。
※レポート作成において必要項目を入力しても次の画面へ遷移するボタンが活性化しない場合は言語を変更してみてください。
比較結果についてはコンソールからでも確認でき、より詳細な結果はGoogleスライドやGoogleスプレッドシートで出力できます。
データ収集した結果を基に、サイズ適正化の計算パラメータでVMの最適サイズを計算してくれているのが分かりますね。
移行計画~移行まで
アセスメントの結果をもとに、移行計画を策定し、移行作業を開始します。
本記事では具体的な移行手順まで詳細に触れませんが、移行計画では以下のようなことを検討する必要があります。
- クラウドスペックの検討 – アセスメントの結果を踏まえてどのようなスペックにするか
- 移行方法の検討 – どのようなツールを使用するか
- 依存関係のマッピング – サーバの依存関係を確認し、移行順序の検討
まとめ
いかがでしたでしょうか。
移行を検討する際にスペックやコストを最適化した状態で考えると、移行センターというツールが役立つ可能性があります。
なんといっても、この移行センターは無料で使用できる点が大きな利点です。
また今回は触れませんでしたが、他クラウド(AWS、Azure)仮想マシンの移行の評価にも利用できるようです。
一部コンソール画面で言語設定を変更する必要がある箇所なども見受けられましたが、今後のリリースで機能が追加されたり、レポートの種類が増える可能性があるので、将来的にはますます使いやすくなるかもしれません。
興味がある方は一度試してみてください。ここまで一読いただきありがとうございました。
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