2025年6月17日

ECサイトへセマンティック検索導入~Vertex AI Search for Commerceについて~


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自社ECサイトの検索機能やレコメンデーション機能を強化し、コンバージョン率や収益性の向上を目指している方に向けて、Google Cloud が提供するコマース向け検索サービス Vertex AI Search for Commerce の特徴と導入メリットをご紹介します。
 
本記事は 2025 年 5 月時点の情報に基づいて記述されています。今後のアップデートにより、機能、操作方法、構築手順などが変更される可能性がある点にご留意ください。
 
なお、記事内で使用しているデータは、すべて検証用に作成した架空の商品データです。
また、Vertex AI Search for Commerceは VAIS:C と略されることがあるため、本記事でも以下、VAIS:C と表記します。

Vertex AI Search for Commerce とは

Vertex AI Search for Commerce は、Google Cloud が提供する e コマース向けのサービスであり、Google 品質の検索機能とレコメンデーション機能を自社サイトに導入できます。高度な検索クエリの理解とパーソナライズを特徴とし、コンバージョンと収益の最大化を目指すことができます。

VAIS:C の特徴:高度な検索機能

VAIS:C はセマンティック検索と対話型検索をサポートしていますが、今回はセマンティック検索機能に焦点を当ててご紹介します。

セマンティック検索とは、キーワードの一致だけでなく、ユーザーの検索クエリに含まれる背景にある意味や意図を理解する検索手法です。

例えば、キーワード検索でよく用いられる LIKE 検索では、特定の文字列を含むものを検索します。そのため、完全に「靴」という文字が検索対象に含まれていない場合、検索結果にヒットしません。実際に、今回用意したデータで LIKE 検索を実行したところ、検索結果は 0 件でした。
  WHERE CONCAT(product_name, description) LIKE "%靴%"
もし、SQL の LIKE 検索だけで検索機能を実装した場合、ユーザーは目的の商品を見つけることができず、機会損失につながる可能性があります。これを回避するためには、事前に辞書登録やロジックによる調整が必要となり、運用負荷が増大します。

 

一方、VAIS:C で「靴」と検索してみます。
検索意図である「」の意味を理解し、靴の種類である「スニーカー」「フラットシューズ」「パンプス」の文言が商品説明に含まれる商品を返却していることを示しています。

セマンティック検索のメリット

セマンティック検索を導入することで、検索結果のヒット率向上が見込まれ、ユーザー体験を向上させることができます。

  • 商品名やブランド名を正確に入力しなくても検索結果に含まれる
  • ひらがな、カタカナ、漢字、英字の表記揺れを吸収できる

 

上記のような特性により、”既存のサイトで検索結果が 0 件となり離脱していた”ユーザーに対して商品を提供できる機会が増えます。特に、日本語の場合、ひらがな、カタカナ、漢字のように検索で利用される表記の種類が多いため、より効果が期待できます。

 

具体的に、VAIS:C で「レザー」と検索した場合の挙動を見てみましょう。
キーワード検索の場合、プログラムで「れざー」を「レザー」に変換した上で、文字列検索を行う必要があります。ユーザーが入力する可能性のある検索クエリに対して、都度辞書登録が必要になるため、セマンティック検索である程度吸収できると、運用負荷を大幅に軽減できます。

Google Cloud の VAIS:C 導入メリット

1.  Google 品質の検索機能を容易に導入可能

セマンティック検索を用いた検索処理を実現しようとすると、複数の手法を組み合わせる必要があり、独自に構築するには高いコストがかかります。Google Cloud の 「セマンティック検索とは 」の解説によると、セマンティック検索は主に以下の 4 つの手法によって実現されています。
  1.  ユーザーが入力したクエリを解析する
  2.  ナレッジグラフなどを用いてクエリのコンテキストを理解する
  3.  コンテンツとクエリの関連性を分析する
  4.  クエリとコンテンツの関連性を並べ替える
商品情報の関係性に関する情報が格納された”ナレッジグラフ”の構築や、検索結果の並び替え処理を独自に行うには相応のコストがかかります。フルマネージドサービスとしてセマンティック検索を利用できる点は、VAIS:C 導入の大きなメリットと言えるでしょう。

2.  GA4 のデータを活用可能

多くのサイトでは、ユーザーの行動履歴トラッキングのために GA4 が導入されているかと思います。VAIS:C には、GTM 連携により GA4 のデータをリアルタイムに連携する機能があり、既存の GA4 データを活用して検索やレコメンデーションをパーソナライズできます。

同じ検索クエリでも、ユーザーの好みは異なります。過去の閲覧、検索、購入履歴から、そのユーザーが購入しそうな商品を優先的に表示できます。
また、継続的にイベントデータを学習することで、ターゲット指標に対して最適な検索結果を返せるようになります。

3.  検索機能に加えて、レコメンデーション機能も提供

パッケージ製品の場合、検索エンジンとレコメンデーションエンジンが別々のサービスとして提供されていることが多いですが、VAIS:C は両方の機能を備えています。
行動履歴データは検索とレコメンデーションで共通して利用されるため、よりユーザーの嗜好に合致する商品をレコメンデーションできます。通常、別々に管理する必要があるデータを一元管理できるだけでなく、高度なパーソナライズ機能を利用できる点は VAIS:C の大きなメリットです。
商品データは「商品カタログ」として管理します。商品カタログのインポートが完了すると検索機能が利用可能になり、同じ商品カタログデータを用いてレコメンデーションを作成できます。
過去 90 日間のユーザー行動ログを連携します。

導入の流れ

これまで、VAIS:C のメリットと特徴について説明してきました。
ここでは、実際にサイトへ導入する際の具体的な流れをご紹介します。
既存の EC サイトに VAIS:C を導入する場合、通常は PoC(概念実証)から開始します。
PoCでは、既存の検索・レコメンデーション機能と VAIS:C の A/B テストで比較し、導入効果を検証します。検証のためには、EC サイトにVAIS:Cの検索とレコメンデーションの組み込みが必要となるため、それに伴う、データ連携や API の開発を行います。そして、PoC の結果、効果が確認されてから、実運用に向けて本番環境への導入作業へと進みます。

まとめ

Google Cloud のコマース向け検索サービス Vertex AI Search for Commerceの特徴と導入メリットをご紹介しました。

 

  • VAIS:Cは、ECサイトの検索とレコメンデーション機能を強化するGoogle Cloudのサービス:コンバージョン率と収益性の向上を目的とし、高度な検索クエリの理解とパーソナライズを特徴とします。
  • VAIS:Cのセマンティック検索は、キーワードの一致だけでなくユーザーの意図を理解する:これにより、表記揺れや曖昧な検索でも的確な商品を表示し、機会損失を防ぎ、ユーザー体験を向上させます。
  • VAIS:C導入のメリットは、Google品質の検索機能、GA4データ活用、検索+レコメンデーション機能の一元提供:これにより、開発コストを削減し、高度なパーソナライズを実現、データ管理の効率化を図ることができます。
これらのメリットを活かすことで、VAIS:CはECサイトの顧客体験向上や、それに伴う売上増加に貢献できる可能性があります。

システムサポートでは、VAIS:C やその他クラウドサービスの導入支援を行っています。「興味がある」「導入を検討している」「導入を進めている」のいずれでも、お手伝いできることがあるかもしれません。まずは下記リンクよりお気軽にお問い合わせください。

参考文献

2025年6月17日 ECサイトへセマンティック検索導入~Vertex AI Search for Commerceについて~

Category Google Cloud

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