2026年8月4日

Google Antigravityとの協調開発と特化型カスタマイズ(第2部)


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「生成AIにコードを書かせてみたら、指示と全然違うファイルを編集されてしまい、全体のビルドが通らなくなった」
「エラーが出たのでデバッグを指示したら、さらに謎のエラーコードが増えて、結局どこが変更されたのか人間が追い切れなくなった」

AIコーディングを実際のプロジェクトに導入した際、このような「手戻りの多さ」や「ブラックボックス化」に直面した開発マネージャーやエンジニアの方は非常に多いのではないでしょうか。AIは高速にコードを書くことができますが、その裏で「何がどう変わったのか」が不透明なままでは、最終的な品質レビューやデバッグにかえって時間がかかってしまい、本末転倒です。

人間とAIが「安全かつ確実に」ひとつのソフトウェアを作り上げるためには、コードを書く前後の「合意形成と検証プロセスの可視化」が不可欠となります。

連載の第2部となる本記事では、Antigravityが提供する「実装計画書(Plan)」と「ウォークスルー(Walkthrough)」による透明性の高い協調開発プロセス、そしてエージェントに自社特有の資産やノウハウを注入する「MCP(Model Context Protocol)連携」および「カスタムスキル」の基本概念と具体的な構成例について解説します。

手戻りをゼロにする「Plan(実装計画書)」と「Walkthrough(ウォークスルー)」の協調プロセス

AIエージェントの開発作業をブラックボックスにせず、人間がコントロールし続けるための中心的な仕組みが、Antigravityの「Plan(計画)」「Walkthrough(報告)」という2つのアーティファクトです。これをIT初心者の方にもわかりやすく例えるなら、住宅建築における「設計図の合意」と「引き渡し検査」の関係にそっくりです。

建築プロセスに例えるAIとの協調フロー

  • Plan(実装計画書)= 「工事前の『設計図と見積書』」
    家を建てる(コードを書く)前に、「どこの壁を取り壊して、どの資材を使って、どう補強するか」を書類にして施主(人間)に見せ、合意を取るプロセスです。
  • Walkthrough(ウォークスルー)= 「完成後の『立ち会い竣工検査と報告書』」
    工事が完了した後に、「設計図通りに作りました」「耐震テストの結果は合格でした」と、写真(スクリーンショット)付きで引き渡し報告を受けるプロセスです。

このプロセスを、あるWeb開発プロジェクトにおける「Reactダッシュボード画面に期間指定カレンダーフィルターを追加する」というタスクで、生き生きとしたストーリーとして追ってみましょう。

【検証シナリオ】設計のズレをゼロにする実際の協調プロセス

  1. AIが計画書を提出: エージェントは現状のコードを分析し、実際のコード編集を始める前に implementation_plan.md という計画書を作成します。そこには「編集対象ファイル:`Dashboard.jsx` と `date_utils.js`」「追加する自動テストケース」「既存のレイアウト競合の懸念」が明記されます。
  2. 人間がレビューして微調整: 開発者はこの計画書を読みます。「今回は `date-fns` ではなく `dayjs` ライブラリを使いたい」「CSSレイアウトが崩れそうなら、先にその設計方針をこうして」と計画書にフィードバックを追記し、「承認(Approve)」を返します。
  3. AIが自律実装とテスト: 承認を得たエージェントは、計画通りにコードを書き、テストを走らせます。
  4. 証拠付きの完了報告: エージェントは最終成果として、変更コードの差分(diff)、パスしたテストログ、さらに「実際の画面のレンダリング結果(スクリーンショット)」をまとめた walkthrough.md を作成して人間に提出します。

このように、コードが書かれる前に「設計方針」をすり合わせ、書かれた後に「エビデンス(検証結果)」で確認するため、AIとの開発で最も発生しやすい「作ってみたら全然違っていた」という手戻りが、物理的に発生しなくなります。Antigravity CLIで生成された進捗や過去の相談履歴(セッション)は、パソコン側のセッションファイルにシームレスに格納・管理されます。

Plan、Walkthrough、Screenshotsがあることで、具体的に何ができるようになるか?

  • コードを書く前の「設計合意(Plan)」で手戻りゼロ: AIが実際にコードを編集し始める前に「どのファイルを修正し、どんなテストを追加するか」を記述したPlanが生成されます。人間は事前にこれを見て「このライブラリを使ってほしい」「この設計はこう変更して」と指示(レビュー)できるため、完成後に「思っていたのと違う」という手戻りが起きません。
  • UI変更時の「画像キャプチャ自動添付(Screenshots)」による目視確認: フロントエンドの変更があった場合、エージェントは自動テストのついでに変更後の画面キャプチャ(Screenshots)を撮影し、報告書(Walkthrough)に自動添付します。人間はブラウザを起動して手動で画面を確認する手間がなく、画像を見るだけでビジュアル変更の正しさを一瞬で判断できます。
  • 証拠付きの完了報告(Walkthrough)による迅速な引き渡し: 変更コードの差分(diff)に加え、自動テストがパスしたログやスクリーンショットをまとめた報告書(Walkthrough)が提出されます。レビュアーは引き渡し検査をワンクリックで終えられ、レビュー負荷が激減します。

自社資産とAIを安全に繋ぐ「MCP(Model Context Protocol)」の拡張概念

どれほど頭の良いAIであっても、自社のドキュメントサーバーに置かれた非公開の「API仕様書」や、社内ローカルの「データベース構成」を知らなければ、プロジェクトに特化した正確なプログラムは書けません。しかし、インターネット上の汎用AIにそれらの機密情報を丸ごと渡すわけにはいません。

この「AIエージェントと、外部の重要データソースやAPI」を、安全かつシームレスに接続するオープン規格がMCP(Model Context Protocol)です。

MCPとは、AIエージェントに対して「このデータベースからデータを検索する機能」「このチケット管理システムを更新する機能」などの特定の道具(ツール)を、安全な通信規格を介して動的に提供する接続プロトコルです。

MCPの概念をわかりやすく例えるなら、「AIエージェントが、社内の厳重に守られた金庫室にアクセスするための、監視カメラ付きの専用トンネル」のようなものです。エージェントはトンネル(MCPサーバー)の出口から提供される機能(データの検索やAPIの呼び出し)だけを利用でき、社内インフラ全体に不正に入り込むことはできません。

Antigravity CLIでは、パソコン全体で共通して使うグローバル設定ファイル(~/.gemini/antigravity-cli/mcp_config.json)と、開発プロジェクトごとに個別に適用するワークスペース設定ファイル(.agents/mcp_config.json)の2つのレイヤーで整理して管理できます。これにより、機密性の高い接続設定をプロジェクトごとにカプセル化できます。

// .agents/mcp_config.json の設定例
{
"mcpServers": {
"internal-db": {
"command": "python3",
"args": ["mcp_db_server.py"]
},
"confluence-tool": {
"command": "npx",
"args": ["-y", "@modelcontextprotocol/server-confluence"]
}
}
}

このように設定するだけで、ツールがエージェントに自動ロードされ、外部インフラの重要データを安全に探索できるようになります。

MCP(Model Context Protocol)があることで、具体的に何ができるようになるか?

  • 社内非公開データ(仕様書・DB)のセキュアな自律活用: インターネットから隔離された社内DBやConfluence、Jiraなどのシステムに対し、安全な監視付きトンネル(MCP)を通じてエージェントに機能提供できます。外部へのソースコード・機密データの無防備な漏洩を防ぎながら、AIが社内仕様に完璧に沿った実装を行えます。
  • 複雑な外部連携機能の自動追加: 自前でAPI連携のための複雑なつなぎ込みコードを書くことなく、公開されているMCPサーバー(Slack連携、GitHub連携、ファイル操作等)をロードするだけで、AIが瞬時にそれらの道具を使いこなせるようになります。

チームの知見と構成をインストールする「Skills」「Rules」「Plugins」

開発プロジェクトには、必ずそのチーム独自の「暗黙知」や「コーディング規約」が存在します。

「変数名はキャメルケースではなく、スネークケースで書くべし」
「マイグレーション(データベース移行)ファイルを作る時は、必ずロールバック用のクエリもセットで書くべし」

これらをAIに毎回プロンプトで指示するのは不可能ですし、忘れると規約違反のコードが山ほど出来上がってしまいます。Antigravityでは、これらのルールを「エージェントの常識」としてインストールするSkills(カスタムスキル)や、Rules(ルール)の仕組みを提供しています。

プロジェクトのルートディレクトリに GEMINI.mdAGENTS.md(または .agents/rules/ フォルダ内)を配置し、そこに開発方針やビルドテストの手順を書くことで、AIエージェントが自動でこれらを読み込み、厳格に遵守します。また、チーム全員で共通して使い回すグローバルルールは ~/.gemini/GEMINI.md に配置して一元管理可能です。

さらに、特定の難しいタスク(「SQLパフォーマンスチューニング」など)のための特化型指示セットやカスタムツールへの参照をまとめた Skills(カスタムスキル) は、プロジェクト内の .agents/skills/ フォルダ(あるいはグローバルの ~/.gemini/antigravity-cli/plugins/ ディレクトリ内)に配置することで、自動的にエージェントに機能拡張として認識されます。これにより、新規プロジェクトへのAI開発体制がファイル配置のみで瞬時に完了します。

Skills、Rules、Pluginsがあることで、具体的に何ができるようになるか?

  • チーム内コーディング規約(Rules)の自動強制: 「非同期処理には try-catch を書くこと」といった規約を登録しておくだけで、エージェントは規約に沿ったコードしか書かなくなります。人間がプルリクエストで規約違反を指摘する手間が完全に不要になります。
  • 特定タスクのプロフェッショナル化(Skills): SQLチューニングなどの複雑な手順.agents/skills/sql-optimizer/ に定義しておくことで、通常のエージェントに必要なタイミングで専門知識を適用させることができます。
  • 新規プロジェクトへのAI開発体制の一瞬の導入: チームのSkillsやRulesを他のリポジトリにコピーするだけで、メンバー全員が同じAIルールを共通適用した開発環境をオンボーディング・共有化できます。

イベント駆動で自動開発をキックする「Sidecars(サイドカー)」と「Hooks(フック)」の連携

AIエージェントに自律開発を任せる際、「人間がチャットで指示した時だけ動く」のでは、夜間や不在時の即時対応ができません。バグチケットの起票やファイル変更といった「イベント」を検知して、AIを全自動で起動させたいものです。

これを実現するのが、常駐監視プロセスであるSidecars(サイドカー)と、エージェントの処理の引き金となるHooks(フック)です。

  • Sidecars(サイドカープロセス)=「24時間不眠不休の常駐監視員」
    メインのAIエンジンとは独立し、ローカルファイルシステムやGitHubのWebhook、Jiraチケットの更新などを常に裏側でリスン(監視)し続ける常駐スクリプトです。
  • Hooks(イベントフック)=「エージェントにタスクを伝える神経網」
    Sidecarsがイベントを検知した際に、「Issueが作成された」「ビルドが失敗した」というデータをエージェントへ配送し、自動起動させて特定のタスクを開始させる引き金です。

これらと、前述の自律開発シナリオを組み合わせると、以下のような自律的な開発運用(ユースケース)が実現します。

SidecarsとHooksによるイベント連動の仕組み

【検証シナリオ】ローカル開発での自律テストと自動デバッグ

開発者がファイルを保存した瞬間(ファイル変更イベント)に、常駐するSidecarsが変更を検知。即座にHooksを介してエージェントに通知されます。エージェントは自動でテストコマンドを叩き、もしエラーが出た場合はエラー内容を自動分析して「テストが失敗しました。〇行目の型定義を直しますか?」というPlanを作成して人間に提示します。

このように、Sidecars and Hooksを導入することで、AIエージェントは「指示を待つだけのツール」から「イベントに即座に反応して自律的に動き出すプロアクティブなパートナー」へと進化します。

Sidecars と Hooksがあることで、具体的に何ができるようになるか?

  • 24時間の全自動バグ修正&テスト実行: 人間が手動でAIに指示を出さなくても、常駐するSidecarsがGitHub Issueやファイルの変更をキャッチし、Hooksを叩いてAIエージェントを自律起動します。夜間であっても不具合を自律修復し、朝には検証済みのプルリクエストが手元に届く仕組みを構築できます。
  • イベント連動型のプロアクティブな開発支援: テストが失敗した、あるいはソースコードを保存したなどの「イベント」をきっかけに、AIが自動でデバッグやテストコードの追加に着手し、開発者が必要とするタイミングで先回りして修正案を提示してくれます。

まとめ

第2部で紹介した「Plan/Walkthroughの合意形成」や「MCP/カスタムスキル」「Sidecars/Hooks」による自動化は、企業に以下のような絶大なビジネスインパクトをもたらします。

① レビューコストの削減と「手戻りゼロ」による開発期間の短縮

コードを書き始める前の「Plan」の段階で、設計や使用するライブラリの齟齬を人為的レビューで修正できるため、実装後に「やっぱりやり直して」という致命的な手戻りが発生しません。完了時も、テストログと画面キャプチャ(Screenshots)が揃った「Walkthrough」を読むだけなので、人間のコードレビューにかかる時間が大幅に削減されます。

② 暗黙知の「資産化」と属人化の解消

チーム独自のコーディング規約や手順が「Rules」や「Skills」という設定ファイル(コード)として定義されるため、開発のノウハウが個人の頭から離れ、「プロジェクトの共有資産」になります。新メンバーのオンボーディングコストや、外部パートナーに開発を委託する際の統制コストが劇的に低下します。

③ 社内レガシーシステムとの安全な協調とDXの加速

「使い方が難解で誰も触りたがらない社内システム」や「ドキュメント化されていないデータベース」であっても、MCPを介してエージェントに接続すれば、AIがそれらのマニュアルを解読しながら安全に連携ロジックを実装してくれます。既存のIT資産をAIのパワーでモダナイゼーションするスピードが跳ね上がります。

本記事(第2部)では、人間とAIが「手戻りゼロ」で共同開発するための協調プロセス、そしてエージェントを自社仕様にカスタマイズする仕組みについて解説しました。

  • Plan & Walkthroughは、AIの自律実行の前後において、人間とAIが「設計の合意」と「証拠付きの成果確認」を行うことで、手戻りとブラックボックス化を防ぐ。
  • MCP(Model Context Protocol)は、AIエージェントの目の前に、社内システムやデータベースへ繋がる「安全な専用トンネル(ツール)」を用意する。
  • Skills & Rulesは、チーム独自のルールやマニュアルをAIの頭脳に恒久インストールし、成果物の品質を均一にする。
  • Sidecars & Hooksは、ファイル変更やチケット起票といったイベントを24時間監視し、自律開発タスクを自動キックする神経網である。

AIの爆発的な作業スピードを、人間が設計した安全な「合意のプロセス」と「知識データベース」で囲う。これこそが、AIを「ただのチャットのおもちゃ」から「プロジェクトの強力なコア戦力」へと引き上げるための核心です。

続く第3部(最終回)では、これまでに紹介したすべての機能(Subagents、Permissions、MCP、Skills、Rules、Sidecars、Hooksなど)をフル連結した、開発プロセスを圧倒的に楽にする「フル装備」の最強構成ガイドをお届けします。イベント検知からプルリクエスト作成までを全自動で回す未来のアーキテクチャに迫りましょう。

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2026年8月4日 Google Antigravityとの協調開発と特化型カスタマイズ(第2部)

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