2025年7月8日

VAIS:C効果をLookerで可視化!ECサイト 生成AI導入改善ダッシュボード開発


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こんにちは!Google Cloud 研究開発チームです。 
Google Cloud が提供する e コマース向けの AI を活用した検索・レコメンドサービス Vertex AI Search for commerce (以降 VAIS:C) をお使いの皆さん、VAIS:C 導入前と比べてパフォーマンスがどのくらい改善されたか比較ができない…というお悩みはありませんか?
そのようなお悩みを解決するために、
Google Cloud 研究開発チームではECサイト 生成AI導入改善ダッシュボード」を作成しました。 
本記事では、ダッシュボード作成時に得た知見や所感を交えて、作成したダッシュボードをご紹介します。
なお、ダッシュボードは、Looker の学習をはじめて 1 年ほどのメンバーで作成しています。 

作成したダッシュボード

今回作成したダッシュボードです。
各指標やグラフの意味や目的は下記で説明します。

1枚目の画像は、各指標の改善率、各指標の改善率を表す折れ線グラフです。
2枚目は各指標の元となる実データのテーブルを表示しています。

表示データの想定

  • ECサイトのGA4データを使用
    VAIS:Cレコメンデーション導入効果を検証するため、 ECサイトのGA4データに基づいたダッシュボードを作成しました。VAIS:Cレコメンデーション導入後2週間(2025年1月1日から1月14日)のデータを対象としています。 
  • 導入効果検証方法
    本来は、ECサイトを訪れるユーザーをVAIS:C導入レコメンド、既存レコメンドが適用されたLPに均等に誘導し、それぞれのGA4データを同じ時間軸で比較することで、導入効果を検証(ABテスト)します。
    今回は都合により、VAIS:C導入後のGA4データを加工することで疑似的にABテストを再現しているため、本記事内のグラフはレコメンデーション導入効果”例”であることにご留意ください。
  • 比較対象
    レコメンデーション導入効果を比較するために、以下の4つのKPIを比較対象としました。
    クリック率: 詳細画面が表示されたセッション数 / セッション数
    カート追加率: 商品がカートに追加されたセッション数 / セッション数
    購入率: 商品が購入されたセッション数 / セッション数
    売上: 総売上 / セッション数
    具体的には、詳細画面表示(view_item)、カート追加(add_to_cart)、購入(purchase)といったGA4イベントのセッションあたり発生率を比較することで、レコメンデーションの効果を検証します。 

どこに注目してダッシュボードを作ったか

今回のダッシュボード作成において工夫した4つのポイントを紹介します。 

  1.  KPIの工夫 
  2.  一瞥で差が分かるように、どれだけ改善したかが端的にわかるように表示や色を工夫 
  3.  Gemini in Lookerでサマリ表示 
  4.  Gemini in Lookerで自然言語での問い合わせ 

KPIの工夫

レコメンデーション導入効果の検証では、純粋な売上や購入数ではなく、各イベントのセッションあたり発生率をKPIとしました。
これは、レコメンデーション有・無それぞれのLPの訪問者数(セッション数)が一致しない場合でも、レコメンデーションの効果を正確に評価するためです。
割合で算出することにより、訪問者数の影響を排除し、レコメンデーション施策そのものの効果を比較できます。

また、セッションあたり発生率を用いることで、「一訪問者に対して、どれだけ効果的なレコメンデーションを提供できたか」をより直感的に評価することが可能になります。 

一瞥で差が分かるように、どれだけ改善したかが端的にわかるように表示や色を工夫

限られた時間の中で迅速な意思決定をするには、情報をすばやく明確に伝えることが不可欠です。今回、ダッシュボードを作成するにあたり、ひと目見ただけで導入前後の改善状況が明確に伝わるよう以下の点を工夫しました。 

  •  重要な指標を最も目立つ位置に配置する
    例えば、一番左上や中央上部など、ユーザーの視線が自然に集まる場所に「売上 改善率」や「購入率 改善率」などの重要な指標を配置しました。これにより、ダッシュボードを開いた瞬間に、最も知りたい情報が目に飛び込んでくるようにしています。
  • VAIS:C 導入前と後のデータの色に差をつける
    VAIS:C 導入前と後のデータを明確に異なる色で表示することで、その差が直感的に分かるように工夫しました。今回は、VAIS:C 導入前のデータには薄いグレーを、導入後のデータには誘目性の高い注目色である明るいイエローを使用し、コントラストを意識しました。これにより、ユーザーはグラフを深く読み込むことなく、データを把握することができるようになっています。 

Gemini in Lookerでサマリ表示

ダッシュボードを見る際に、「結局何が重要なポイントなのか」を瞬時に理解できることは非常に重要です。
特に経営層や意思決定者にとって、データの詳細よりも「要するにどうなったのか」という情報にはとても価値があります。 

そこで今回のダッシュボードでは、Gemini in Lookerの機能を活用して、VAIS:C導入前後の改善効果を自動でサマリ表示する仕組みを実装しました。
Gemini in Lookerでは、対象読者に応じたサマリ生成が可能です。 

例えば、経営者層向けに 「主要なビジネス指標の要約と、データから導き出される具体的な次のアクション」に焦点を当てた分析をお願いしてみると、以下のように生成されます。 

(今回はカート追加率のみ抜粋し紹介します) 

  • グラフの説明
    このクエリは、セッション開始日ごとのカート追加率を、既存のレコメンドとVAIS:C導入レコメンドのテストパターン別に比較しています。これにより、新しいレコメンドシステムの導入がカート追加率に与える影響を評価できます。 
  • 要約
    VAIS:C導入レコメンドは、既存のレコメンドと比較して、全体的にカート追加率がわずかに高い傾向にあります。ただし、202516日や15日のように、VAIS:C導入レコメンドのカート追加率が既存レコメンドを下回る日も存在します。このデータから、VAIS:C導入レコメンドは有望ですが、改善の余地があることが示唆されます。特に、既存レコメンドを下回る日の要因を特定し、最適化を行うことが重要です。 
  • 次のステップ
    VAIS:C導入レコメンドが既存レコメンドを下回る日の詳細なセッションデータを分析し、原因を特定します。
    VAIS:C導入レコメンドのアルゴリズムを調整し、カート追加率の向上を目指します。
    A/Bテストを継続的に実施し、VAIS:C導入レコメンドの効果をモニタリングします。 

Gemini in Lookerのダッシュボード要約機能を実装することで、利用者にとって以下のメリットがあると考えています。 

  • 時間短縮: 詳細なグラフを一つずつ確認する前に、全体像を把握できる 
  • 見落とし防止: 重要な変化を自動で抽出してくれるため、見落としの可能性が減る
  • 説明資料作成の効率化: 自動生成されたサマリをそのまま報告書に活用できる

この機能により、データアナリストでない方でも、VAIS:C導入の効果を直感的に理解することができるようになります。
具体的なGemini in LookerDashboard Summarization)の構築方法についてはこちらの記事をご覧ください。
Looker の生成 AI 拡張機能 Dashboard Summarization を試す

Gemini in Looker自然言語での問い合わせ

「データ分析」と聞くと、「専門知識がないとグラフを作るのは難しそう…」と身構えてしまうかもしれません。
しかし、Lookerの
Explore Assistantを使えば、自然言語で質問するだけで、見たいデータを瞬時にグラフ化してくれます。
このダッシュボードにもこの
Explore Assistantを埋め込みました。これにより、誰もが直感的にデータを深く堀り下げ、グラフを表示できる環境を実現しています。

Explore Assistantの画面を開くと、下記画像のようにチャット形式の画面で自然言語で見たいデータを問い合わせが行えます。
例えば「商品ごとに注文数の合計を求めて、多い順に商品名と注文数合計を表示してください。カテゴリーをアウターで絞ります。」と入力します。 

Explore Assistantが質問の内容を解釈し、結果を生成します 

出力されたものに応じて、表形式への変更やグラフの見た目も変更できることができます。
画像の例は上記でExplore Assistantによって生成された棒グラフを表形式へと変更した結果です。 

Explore Assistantは、自然言語での問い合わせでグラフ生成が可能となるため、専門知識が不要です。
それにより誰もが自由にデータ分析ができ、データに基づいた迅速な意思決定が可能となります。
また、データ分析者にとっても複雑なグラフをたたき台として生成することができ、ゼロから作成する手間を省くことが可能となります。 

Explore Assistantの構築方法についてはこちらの記事を参照ください。
自然言語でデータを可視化できるLookerのExplore Assistantを試してみた 

利用者の声

実際にこのVAIS:C×Lookerダッシュボードを営業メンバーに確認してもらったところ、以下のような感想をもらうことが出来ました 

  • クライアント提案時に導入効果が一目で分かり、説得力が大幅に向上しそうだと思いました! 
  • コンバージョンファネルの各段階での改善効果が視覚的に分かるので、改善の優先順位付けがしやすくなりそうです。A/Bテストの効果測定も格段に楽になりそう。 
  • Geminiの自然言語クエリ機能で、普通の言葉で質問するだけで答えが返ってくるのが便利です。SQLを書く必要がないので、データ分析の敷居が下がりますね。 

技術的な実装だけでなく、組織の業務プロセスや意思決定のあり方まで変革できる可能性を秘めたソリューションとなっています 

まとめ

今回は、Lookerを用いて、ECサイトにおける既存のレコメンドとVAIS:Cレコメンドのパフォーマンスを多角的に比較できるダッシュボードを開発しました。導入前後の重要指標が視覚的に一目でわかるため、VAIS:Cがもたらすビジネスメリットをデータに基づいて深く分析できます。
さらに、このダッシュボードにはGemini in Lookerの機能(Dashboard Summarization / Explore Assistant)を組み込みました。これにより、ダッシュボードの要点を瞬時に文章で要約したり、自然言語で対話するように追加の分析を行ったりすることが可能になり、データ活用のスピードと質を飛躍的に向上させます。 

2025年7月8日 VAIS:C効果をLookerで可視化!ECサイト 生成AI導入改善ダッシュボード開発

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