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はじめに:なぜ今、会話型AIが注目されているのか? 
近年、ChatGPTやGeminiなどの生成AIの登場により、「人と自然に会話できるAI」は一気に身近な存在になりました。以前のチャットボットは、決まったキーワードにだけ反応したり、簡単なFAQに答えたりするのが主な役割でした。しかし今では、ユーザーの曖昧な質問や文脈も理解し、柔軟に応答できるAIが登場しています。
ただし、ビジネスの現場でAIを活用するには、「会話できる」だけでは十分ではありません。「正確に」「一貫して」「目的に沿って」応答できることが求められます。こうしたニーズに応えるためには、高度な自然言語理解に加えて、会話の流れを制御する仕組みが欠かせません。
例えば、サポート窓口などでは「返品方法を必ず3つのステップで案内してほしい」「必ず注意点を伝えたい」といった明確な要件があると思います。こうした場面では、会話の流れや回答内容を設計できる「目的を持った、タスク指向型会話」が重要になります。自由な発話を受け止めながらも、ゴールに向かって会話を誘導し、正確な情報を伝えることを実現できるのがGoogle Cloudのサービスの1つである「Conversational Agents」です。
Conversational Agents
 

Conversational Agentsとは?

Conversational Agentsとは、 簡単にいうと、人と自然に会話ができるAI(チャットボットや音声アシスタント)を簡単に作れるGoogle Cloudのサービスです。

このサービスがすごい点は2点です。

①会話をコントロールできる

自由に話すだけのAIではなく、「こういう返答をしてほしい」「この順番で案内したい」といったルールを設定できます。

②会話の流れ(フロー)を設計できる

例えば

ステップ1:名前を聞く

ステップ2:希望日時を聞く

ステップ3:予約を完了する

という手順通りに会話を進められるようになっています。

カスタマーサポートの自動化、サービス予約の受付など、決まった目的や手順がある会話をAIに任せたいときに便利なサービスです! 

 

2024年から2025年初頭にかけてサービス名、機能名、コンソールの変更があります。

Vertex AI Agents Builderの名前がAI applicationsへ変更、またDialogflow CXコンソールとVertex AI Agents機能playbookとdatastoreがConversational Agentsのコンソールに統合されています。 

What is AI Applications?

Renaming and console consolidation plan

Conversational Agents Playbooksとは?

今回は、Conversational Agentsの中でも「Playbooks」の機能について紹介したいと思います。

・Playbook(プレイブック)は、生成AIエージェントを動かす基本の単位です。

それぞれのPlaybookには「特定のタスク」や「役割」があり、複数のPlaybookを組み合わせるのが一般的です。

たとえば、旅行予約エージェントを作るとしましょう。

このとき、エージェントの中では複数のPlaybookが、それぞれの役割を持って動いています。

 

旅行プランの提案のPlaybookは、ユーザーの希望を聞き、行き先・日程などを提案

宿泊予約のPlaybookは、宿の候補を検索し、希望に合う宿を提示・予約

航空券予約のPlaybookは、フライト情報を探して、料金や時間を案内 などなど。

 

ユーザーが「沖縄に旅行したい!」といったときに、まず「旅行プランの提案のPlaybook」が動き、質問や提案をします。そこから、宿泊予約や航空券予約のPlaybookが順番に呼び出され、やりとりを進めてくれるようなイメージです。

Conversational Agents Playbookの基本的な作成方法

(1)Conversational Agentsのコンソール画面で「Create Agent」をクリックし、エージェントを作成します。 

 

(2)ポップアップが出てくるので、適切なものを選択します。

・Use a prebuild agent:一般的なシナリオで手軽に会話型エージェントを作成したい場合に選びます。

・Build your own:目的にあわせて、会話の流れ(Flow)や手順(playbook)を自分で設計したい場合に選びます。

・Create a Q&A agent:ユーザーからの質問に対して、ウェブサイトやアップロードした情報をもとに自動で答えるエージェントを作りたい場合に選びます。

 

今回はPlaybookを利用したいので、Build your ownを選択します。

 

(3)Display name, Location, Time zone, Default languageを選択し、Playbookを作成します。 

ここで左側のナビゲーションメニューの機能について紹介します。

Playbooks:Playbookを作成・編集できます

Flows:会話の流れを視覚化し、作成・編集できます

Tools:Playbooksで使うツール(機能)を管理できます

Prebuilts:さまざまな一般的なユースケース向けに、すぐに使用できる構築済みエージェントをインポートします

 

(4)Playbooksのページに「Default Generative Playbook」が作成されています。

これはまだ何も設定していない状態ですが、ページ右上の「Toggle Simulator」でエージェントとユーザーの対話のシミュレートが可能です。

PlaybookはLLM(大規模言語モデル)を利用しているため、何も設定していない状態でも会話を続けようとしてくれます。

試しに「こんにちは」と話しかけると「こんにちは! How can I help you today?」と返答がありました。

さらに、「新しい子犬用のおもちゃを買いたいと思うんだけど、7か月のチワックスにはどんなおもちゃがいいかな?」と質問すると英語だが、内容的には「素晴らしいですね!7ヶ月のチワワミックス犬にぴったりのおもちゃを見つけるお手伝いをさせていただきます。どんなおもちゃをお探しですか?耐久性のあるもの、インタラクティブなもの、それとも噛み癖を治してくれるものなど、どんなものがお好みですか?」とやりとりを続けようとする返答が返ってきました!しっかり会話できていますね! 

Playbookは、特別な設定がなくてもすぐに会話を始められるのが魅力ですが、

名前、目的(ゴール)、指示などを設定することで、より目的に合った会話ができるようになります。

次に、具体的な設定項目を紹介します。

 

(5) 特定のタスクを達成するために、下記4つが最低限設定が必要となります。

①Playbook name

Playbookの名前:このPlaybookが何をするためのものなのか説明するものでなければいけません。

②Goal

目標→Playbookが達成するべきこと、達成するべきでないことを説明します。

例)エージェントが応答すべきではないことなど。

③Instructions

指示→Playbookが従うべき具体的な手順を記載します。

コールセンターのスクリプトや調理の手順書のイメージです。

④Examples

例→エンドユーザーとエージェント アプリ間のサンプル会話を入力します。各Playbookには1つ以上の例が必要です。

 

Playbook data

(6)実際にベストプラクティスを参考に各項目を設定してみます。

私たちは今回、自社の最適なソリューションを提案するPlaybookを作成してみました!

【Playbook名】

ポイント:意味が明確な自然言語の名前を使用する

例)「company_specialist」よりも、「カスタマーヘルプセンタープレイブック」が適切

【目標】

ポイント:簡潔に目的を説明する

Playbook goals

【指示】

ポイント:

・ユーザの問題を解決するための段階的なアプローチを記述する 

・高レベルの指示を簡潔な自然言語で記述する 

・ツールを使用する場合、ツールの使用シナリオを簡潔に記述する 

※今回ツールについては詳細な説明は行いませんが、ツールを利用することで、外部のデータやサービスにアクセスすることができるようになります。私たちは今回Data storeを利用して自社のソリューションに関する情報をPlaybookに渡しています。

Playbook instructions

【例】

ポイント:

・少なくとも1つの例を作成(最低4つ以上推奨)かつ、必ずハッピーシナリオ(ユーザーが意図通りにスムーズに目的を達成できる理想的なやりとり)を含む

・完璧な指示を記述するよりも、例の量と質が重要

ツールを使用する場合、例にこの情報を含める

Playbook examples

 

(7)さて、最後にきちんと回答してくれるか試したいと思います。

各項目を設定することで、顧客の悩みを深掘りし、自社のソリューションを提案してくれるようになりました!

次に、何の設定も行っていないときと同様に、チワックスのおもちゃについて尋ねてみました。

想定通り、関係のない質問には回答できない旨を返してくれました!

 

まとめ

Conversational Agentsは「目的に沿った制御された会話AI」を簡単に導入できるGoogle Cloudの強力なプラットフォームです。

・本記事ではその中でも特に「Playbook」の作成・設定方法にフォーカスして紹介しました。

・「Playbook」は自然言語を利用してフローを制御することが可能で、また画面操作で直感的に構築できるため、プログラミングの知識がない方でも始めやすく、開発のハードルが非常に低い点も大きな魅力です。

Conversational Agentsはカスタマーサポートや業務自動化、問い合わせ対応など、実務に使える会話AIを検討している方にとって、非常に有力な選択肢です。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

2025年6月12日 Conversational Agentsとは?初めてのPlaybooks使い方ガイド

Category Google Cloud

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