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「社内のドキュメントを活用して、業務に特化した AI エージェント (RAG エージェント) を作りたい」と考えたことはありませんか?しかし、いざシステムを構築しようとすると、ドキュメントのベクトル化や RAG システムの整備、LLM とのオーケストレーションなど、複雑な実装が必要で足踏みしてしまうことも少なくありません。

本記事では、2025/12/15 時点での検証をもとに、Google Cloud が提供する生成 AI エージェントのテンプレート集である Agent Starter PackVertex AI Search を組み合わせて、RAG エージェントを構築する手順をご紹介します。構築ともなう複雑なプロセスを簡略化し、クイックに開発できる方法を解説しているので、ぜひこの記事を参考にエージェント開発を始めてみてください。
 

Agent Starter Pack とは

Agent Starter Pack は、Google Cloud 向けに構築された本番運用可能な生成 AI エージェントのテンプレート集 です。このパッケージを使用することで、エージェント開発にともなう複雑なプロセスを経ることなく、開発者はテンプレートからプロジェクトを作成し、すぐにエージェントのロジックに専念できます。

パッケージは、Cloud Run や Vertex AI などの Google Cloud サービスとの連携を前提として設計されており、プロトタイプにとどまらず、本番運用を見据えた構成になっている点が特徴です。Terraform によるインフラ定義や、CI/CD、ログ・モニタリングといった運用面の仕組みも最初から組み込まれています。

アーキテクチャや提供されているテンプレートの種類など詳しく知りたい方は、Agent Starter Pack をご確認ください。
 

RAG エージェントを構築する

今回は、Agent Starter Pack に含まれるテンプレートの中でも、最もシンプルな構成である adk_base をベースに、 ADK の組み込みツールである Vertex AI Search Tool を使用して RAG エージェントを構築します。シナリオとして「企業についての質問に答えてくれるエージェント」を想定し、Vertex AI Search に格納されているデータをエージェントが参照して回答を生成する仕組みを実装します。なお、この記事では、Google Cloud Shell での作業を前提としています。
 

エージェントを作成する

エージェントのテンプレートをインストールする

Google Cloud のコンソールで Cloud Shell を起動し、以下のコマンドを実行します。今回は、base-agent という名前でエージェントを作成します。ここでは uvx を使用しますが、pip を使用したインストール も可能です。

uvx agent-starter-pack create base-agent

インストーラーが起動したら、いくつかの設定を選択してテンプレートをインストールします。

  • エージェントのテンプレート: 1 (adk_base)
  • デプロイ先: 1 (Vertex AI Agent Engine)
  • CI/CD: 1 (Simple)
  • リージョン: asia-northeast1

 

認証とプロジェクト設定の確認を経て、以下のように表示されればインストール完了です。

> Success! Your agent project is ready.

 

ローカルで動作確認する

作成されたディレクトリに移動し、依存関係のインストールとエージェントの起動を行います。

cd base-agent && make install && make playground

正常に起動すると、以下のようなログが表示されます。

+-----------------------------------------------------------------------------+
| ADK Web Server started |
| |
| For local testing, access at http://127.0.0.1:8501. |
+-----------------------------------------------------------------------------+

INFO: Application startup complete.
INFO: Uvicorn running on http://127.0.0.1:8501 (Press CTRL+C to quit)

コンソールに表示されている http://127.0.0.1:8501 をクリックし、ADK Web UI にアクセスします。画面が表示されたら、サイドバーの Select an agent から「app」を選択しましょう。初期状態では、以下のようなサンプルロジックが実装されているので、チャットを入力して会話ができることを確認します。

* 天気の情報を取得する: 入力テキストに "sf" や "san francisco" (サンフランシスコ) が含まれている場合は「It's 60 degrees and foggy (60度で霧)」、それ以外の場合は「It's 90 degrees and sunny (90度で晴れ)」という固定の文字列を返す。
* 都市の現在の時刻を取得する: 入力テキストに "sf" や "san francisco" が含まれている場合のみタイムゾーンを特定し、正確な現在時刻を返す。それ以外の場合は「Sorry, I don't have timezone information for query: {query} (タイムゾーン情報がない)」と返す。

あわせて、「株式会社システムサポートについて教えてください」と質問してみましょう。 まだ Vertex AI Search と連携していないため、理想的な回答は得られないはずです。この挙動を確認しておくことで、後ほど RAG を実装した際の変化がより明確に分かります。

ADK Web (エージェント開発キット Web)

エージェントの開発とデバッグを容易にするために ADK と統合された組み込みの開発者 UI です。詳しく知りたい方は、Agent Development Kit Web UI (ADK Web) をご確認ください。

たった 1 行のコマンドで、わずか数分でエージェントを構築できました。
次は、このエージェントを Vertex AI Search と連携し、格納されているデータをエージェントが参照して回答を生成する仕組みを実装します。

 

Vertex AI Search と連携して RAG を実現する

Agent Starter Pack には、agentic_rag という RAG エージェント専用のテンプレートも用意されていますが、今回は ADK の組み込みツールである Vertex AI Search Tool を使用して、よりミニマルに RAG 機能を実装する方法をご紹介します。
 

Vertex AI Search を準備する

公式ドキュメントの データストアを作成 の手順に従って、Vertex AI Search のデータストアを構築します。データストアを作成する際に生成される「データストア ID」は後ほど使用するので控えておいてください。今回は、以下のような企業概要を記載したテキストファイルを作成し、データストアにインポートしました。

※ 2025/12/15 時点の情報です。

名称
株式会社システムサポート (略称STS)

所在地
〒920-0853 石川県金沢市本町1-5-2 リファーレ9F

設立
2024年7月
※株式会社システムサポートホールディングス(1980年1月設立)の事業を承継して発足

資本金
1億円

売上高
26,938百万円(2025年6月期・連結)

決算月
6月

社員数
1,370名(2025年6月末現在)

グループ事業
クラウドインテグレーション事業、システムインテグレーション事業、アウトソーシング事業、プロダクト事業、海外事業

事業所
東京、名古屋、大阪、金沢

グループ会社
株式会社システムサポートホールディングス
株式会社イーネットソリューションズ
株式会社STSメディック
株式会社T4C
株式会社アクロスソリューションズ
株式会社STSデジタル
株式会社コミュニケーション・プランニング
株式会社エコー・システム
STS Innovation, Inc.
STS Innovation Canada Inc.

認定・許可
労働者派遣事業 派17-300340
ISO/IEC 27001(ISMS) JQA-IM0941
子育てサポート企業および不妊治療と仕事との両立支援企業(プラチナくるみんプラス認定企業)
健康経営優良法人2025(大規模法人部門)認定
仕事と介護の両立支援企業(トモニンマーク取得企業)
PRIDE指標2025 ゴールド認定
石川県ワークライフバランス企業知事表彰 優良企業賞 受賞
いしかわ男女共同参画推進宣言企業(女性活躍加速化クラス)
石川県パパ子育て応援企業
金沢市こどもの生活サポート企業

 

RAG エージェントのロジックを実装する

エージェントのソースコード agent.py を以下のコードに書き換えます。このコードでは、ADK が提供する VertexAiSearchTool をツールとして追加し、プロンプトを「データストアを参照して回答を生成する」内容に変更しています。{プロジェクトID}{データストアID} はご自身の環境に合わせて書き換えてください。

ポイントは、VertexAiSearchTool をインポートしてツールに追加している点です。これにより、複雑な検索ロジックを自分で書くことなく、エージェントが自律的にデータストアを検索できるようになります。

from google.adk.agents import Agent
from google.adk.apps.app import App
from google.adk.tools import VertexAiSearchTool

import os
import google.auth

_, project_id = google.auth.default()
os.environ["GOOGLE_CLOUD_PROJECT"] = project_id
os.environ["GOOGLE_CLOUD_LOCATION"] = "global"
os.environ["GOOGLE_GENAI_USE_VERTEXAI"] = "True"

DATASTORE_ID = "projects/{プロジェクトID}/locations/global/collections/default_collection/dataStores/{データストアID}"

root_agent = Agent(
name="root_agent",
model="gemini-2.5-flash",
instruction="Vertex AI Search を使用して内部ドキュメントから情報を検索し、質問に回答してください。可能な場合は常に出典を明記してください。",
tools=[VertexAiSearchTool(data_store_id=DATASTORE_ID)],
)

app = App(root_agent=root_agent, name="app")

 

ローカルで動作確認する

エージェントを起動して ADK Web UI にアクセスし、「株式会社システムサポートについて教えてください」と質問してみましょう。Vertex AI Search に登録した内容に基づいた回答が返ってくれば成功です。これにより、エージェントがデータストアと連携し、情報を取得できていることが確認できます。

※ 2025/12/15 時点の情報です。


 

Agent Engine にデプロイする

ローカルでの確認が完了したら、Agent Engine にデプロイしてみましょう。作成したエージェントを Agent Engine にデプロイする仕組みも Agent Starter Pack にはあらかじめ組み込まれています。そのため、コマンドひとつで、すぐにエージェントを公開できます。
 

Agent Engine にデプロイする

プロジェクトを設定し、エージェントのディレクトリに移動してデプロイコマンドを実行します。

gcloud config set project {プロジェクトID}
cd base-agent && make deploy

5〜10分ほど待ち、以下のように表示されればデプロイ完了です。

✅ Deployment successful!

 

サービスアカウントに権限を付与する

デプロイ完了ログの下に、以下のようにサービスアカウントが表示されています。

Service Account: {サービスアカウント}

このサービスアカウントに対し、IAM の管理画面で「ディスカバリー エンジン閲覧者 (roles/discoveryengine.viewer)」ロールを付与してください。 この設定を行わないと、エージェントが Vertex AI Search にアクセスしようとした際に権限不足でブロックされ、エラーが発生します。
 

プレイグラウンドで動作確認する

デプロイログの最後に表示されているリンクをクリックし、Agent Engine のプレイグラウンドにアクセスします。

📊 Open Console Playground: {Playground URI}

画面が表示されたら、ローカル環境と同様に「株式会社システムサポートについて教えてください」と質問してみましょう。 Agent Engine でも、RAG による正確な回答が生成されれば、構築は完了です。

※ 2025/12/15 時点の情報です。


 

まとめ

本記事では、Agent Starter Pack と Vertex AI Search を組み合わせて、RAG エージェントを構築する手順をご紹介しました。

冒頭で触れた通り、これまではドキュメントのベクトル化やインフラ整備といった「下準備」が壁となり、開発を足踏みしてしまうケースも少なからずあったかと思います。しかし、今回ご紹介したツールを活用することで、そうした開発のハードルは一気に下がったのではないでしょうか。また、複雑なプロセスをツールに任せることで、開発者は「ユーザーにどんな体験を届けるか」という、エージェントのロジックそのものに専念できるようになります。

ぜひこの記事を参考に、新しいエージェント開発を始めてみてください。
 


システムサポートでは、Google Cloud の最新かつ高度なソリューションをお客さまに提供し続けることで、お客さまの DX 推進を強力にサポートしてまいります。AI Agent、データアナリティクス/データ分析基盤、クラウドマイグレーション/モダナイゼーションなど、広範囲でご支援が可能です。ぜひ、以下のボタンからお問い合わせください。

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2026年1月8日 Agent Starter Pack + Vertex AI Search で RAG エージェントを構築する

Category Google Cloud

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