2026年9月16日 脆弱性の発見から修正までを自動化するAI- Gemini 3.5 Flash CyberとCodeMenderが描く近未来 Gemini Google Cloud 検索する Popular tags 事例紹介 GEN-STEP 生成AI(Generative AI) Vertex AI Search Looker Studio BigQuery AlloyDB Google Workspace Cloud SQL Category Google Cloud Author rr SHARE 目次 なぜ「軽量・特化型」のモデルが主役になるのか 実行ステップについて 今後の公開に向けて Cyberモデルが実現する今後の活用の未来 まとめ Content AIエージェントは、脆弱性を見つけるスピードを防御側だけでなく攻撃側にも与える。Google自身、「AIエージェントの能力が向上し、防御側が修正するよりも早く脆弱性を発見できるようになる」ことを、今後対処すべき世界的な課題として挙げている。脆弱性の発見が速くなるほど、修正が追いつかない期間――いわゆる無防備な時間――が相対的に長くなるという逆説が起きる。 この非対称を埋めるため、2026年7月、Googleはコードセキュリティ領域で2つの発表を行った。サイバーセキュリティ特化の軽量モデル「Gemini 3.5 Flash Cyber」と、それを組み込んだコードセキュリティエージェント「CodeMender」の提供拡大である。 本記事では、この2つの発表内容をもとに、脆弱性の発見・検証・修正を担うこの仕組みが定着した先に、どのような景色が広がるのかを整理する。 なぜ「軽量・特化型」のモデルが主役になるのか 根深い脆弱性を見つけ出すには、コードが実行されうる無数のルート(実行探索空間)をくまなく調べる必要がある。しかし、巨大な言語モデルをそのたびに呼び出していては、コストと時間がボトルネックになる。大規模なコードベースをスキャンし、膨大な数のコードパスを分析するタスクにおいては、軽くて速いモデルの方が理にかなっている。 Gemini 3.5 Flash Cyberは、この課題に対するGoogleの回答である。Gemini 3.5 Flashをベースに、脆弱性の発見・検証・パッチ適用に特化してファインチューニングされた軽量モデルで、この分野のタスクでは従来のFlashモデルを上回る効果を発揮する。コードセキュリティエージェントの「CodeMender」は、このモデルを複数回呼び出すように設計されており、圧倒的に多くのコードパスを分析したうえで、複数のサブエージェントの結果を1つの高品質なレポートにまとめ上げる。実際、後述のCyberGymベンチマークでは、1つの最終レポートを作成するために最大5回まで呼び出す設定でテストが行われている。 ベンチマークが示す実力 評価 何を測ったか 結果 CyberGym 現実世界の数百件の脆弱性を用いたAIエージェント評価 最大5回の呼び出し設定で、はるかに大規模な他社モデルに匹敵する性能を達成 Big Sleepチームによるストレステスト 安全ガードレールを外した状態で、Chrome・Safariなど複雑なコードベースの脆弱性発見力を検証 従来の3.5 Flash・3.6 Flashを大幅に上回る成績 Chrome本番コミットスキャンパイプライン 非公開の脆弱性を用いた、学習データ汚染のない実運用パイプラインでの評価 3.5 Flashから大幅な性能向上。なお一部の最新競合モデルは安全ガードレールによりタスクを拒否 V8 JavaScriptエンジン(固定回数呼び出し) 同一コードベースでの固有脆弱性の発見数を比較 3.5 Flash Cyberが55件、3.5 Flashが47件、Claude Opus 4.6が36件。うち10件は他の2モデルが見逃していた重大な問題 一般的なモデルは同じ問題を繰り返し見つけるループに陥りがちだが、強力なモデルはより広い網を投げるように多様な問題を見つけ出す。呼び出し回数を増やすほど、新しいコードパスを探索し続け、未知の脆弱性を発見し続けることが確認されている。 実行ステップについて CodeMenderは、脆弱性を見つけて終わりにせず、「発見」「検証」「修正」までを一つのループとして自動化するエージェントである。Google Cloud Blogが公開しているプレビュー版では、その流れが3段階として整理されている。 1 Scan(発見) C/C++、Go、Java、Python、Ruby、Rust、TypeScriptなど主要言語のコードを対象に、メモリ破損・インジェクション・暗号の弱点・不適切なデータ処理といった発見しづらい脆弱性を、種類と深刻度別に分類してスキャンする。 2 Verify(検証) 見つけた脆弱性が本当にリスクなのかを、実際に動く実証コード(PoCエクスプロイト)を作成・実行して確認する。検証はユーザー側が管理する隔離されたサンドボックス内で行われ、誤検知によるアラート疲れを減らす。 3 Remediate(修正) 検証済みの脆弱性に対し、テスト済みのパッチをコード差分の形で自動生成する。LLMを審査役として使い、既存の機能を壊していないか確認するほか、コードベース固有の記法にも合わせられる。最終的な承認とマージは、常に開発者自身が行う。 このループは既存の開発現場に自然に組み込める設計になっている。CI/CDのワークフローに統合できるほか、VS CodeやAntigravityといった開発ツール、あるいは軽量なCLIクライアントからローカル環境で直接使うこともできる。CodeMenderの研究発表当初の実績としては、すでに72件のセキュリティ修正がオープンソースプロジェクトへアップストリームされており、その中には450万行規模のコードベースも含まれる。 今後の公開に向けて この技術は防御にも攻撃にも使える、いわゆるデュアルユースの性質を持つ。そのためGoogleは、Gemini 3.5 Flash Cyberの展開について意図的に慎重なアプローチを取っている。まずは限定的なパイロットプログラムとして、政府機関と一部のTrusted Testerに対象を絞ってCodeMender経由で提供を開始し、徐々に対象を広げていく方針だ。一方で、CodeMenderが備える基盤的な機能そのものは、一般提供されているGeminiモデルを通じて、より広い顧客層に届けられている。 2つの提供ルート 項目 Gemini 3.5 Flash Cyber CodeMenderの基盤機能(GA Geminiモデル経由) 提供チャネル CodeMender経由のみ Gemini Enterprise Agent Platform / AI Threat Defense 対象 政府機関、一部のTrusted Tester Gemini Enterpriseの一般顧客 現在の位置づけ 限定アクセスのパイロットプログラム プレビュー提供中 今後の方向性 徐々に対象を拡大予定 サードパーティ製フロンティアモデルへの対応も予定 一般提供側のガードレールも具体的だ。通信はユーザーのVPCを経由してルーティングされ、データは分離・暗号化され、ソースコードはゼロリテンション(保持しない)で扱われる。検証用のサンドボックスもユーザー側の管理下に置かれる。さらにコストと速度、深いスキャン性能のどれを優先するかに応じて、複数のモデルから選べるマルチモデル方式を採用している。 Cyberモデルが実現する今後の活用の未来 ここまで見てきた仕組みが組織に根づいた先には、どのような変化が起きるだろうか。 まず変わるのは、アラートとの向き合い方だ。検証フェーズで実際に悪用可能かどうかを確認したうえで報告が上がってくるため、対応すべき件数そのものが絞り込まれる。次に変わるのは、修正の性質だ。CodeMenderは新しい脆弱性への即応だけでなく、既存コードを書き換えて脆弱性のクラスそのものをなくす取り組みも行っている。 スピードの変化も具体的な数字として現れている。GoogleのCloud Vulnerability Researchチームは、Gemini 3.5 Flash Cyberを使ってわずか2時間で公開APIのリモートコード実行の脆弱性を発見し、機密性の高い本番サービスのメモリ破損の脆弱性も特定した。 受け身のスキャンから、自律的な修復ループへ 対応すべきアラートは、悪用可能性が検証された案件に絞られる 火消し対応だけでなく、脆弱性のクラスごと消し込む書き換えが並行して進む 大規模で複雑なコードベースでも、継続的な深い分析を人手を介さず回せる まとめ 生成AIのセキュリティ機能はGoogle以外のモデルも、発表されつつあるが、探索空間の広さという課題に対しては、軽量・特化型のGemini 3.5 Flash Cyberが、繰り返し呼び出せるコスト効率の良さで応えている。発見した脆弱性はScan・Verify・Remediateという3段階のループを通じて、検証済みの修正案にまで自動的に落とし込まれる。攻めにも転用できる技術だからこそ、Googleは対象を絞った段階的な公開と、VPC経由の通信・ゼロリテンションといった企業向けガードレールを設計に組み込んでいる。そしてこの仕組みが定着した先には、受け身のアラート対応から、検証済みリスクへの自律的な修復へという、開発ライフサイクル全体の転換が見えてくる。 重要なのは、AIがすべてを決めるわけではないという点だ。どこまでを自動化し、どこで人が最終判断を下すか――そのガードレールを設計するのは、あくまで人の役割である。AIはその内側で速く正確に実行する存在にとどまる。 こうしたAIエージェントを自社の開発体制やGoogle Cloud環境にどう組み込むかは、既存のCI/CDやガバナンス設計との相性を含めて検討が必要になる。 ※本記事の内容は、2026年7月時点の公式発表・公開資料に基づいています。モデルの提供範囲や機能は今後変更される可能性があります。 関連コンテンツ 暴走しないAIエージェントの作り方~Google CloudのAgent Guardrail設計~ by rron 2026年9月11日 システムサポートでは、Google Cloudの導入や活用を支援しております。 Google Cloudを導入したい・導入したけど使いこなせていない…という方は、お気軽にご相談ください! 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